琥珀色の誘惑 ―王国編―
「ライラもそうだが、ラシード……お前の行いは愚の骨頂だ! 少しは自分の立場というものを弁えよっ!」


ミシュアル王子の怒りは活火山の如く噴き上げた。

それもそのはず。相手は大型トラックである。まともに当たっていたら、ふたりとも間違いなく即死だった。

弟の身を案じ、ミシュアル王子が青褪めても無理のない話だ。


『僕のことは構わない。アル、お願いだ。ライラを助けてくれ!』

「無理だ。ライラは罪を犯した。赦しがたい罪だ。シード、お前も騙されていたのだぞ。なぜ怒らん!」

『だったらマッダーフも裁くのか? 違うだろう? 実行したライラだけの罪じゃない。彼女に選択肢はなかったんだ!』 

「ムスリムの教えに背いた、ライラの愚かさが生んだ罪だ!」

『愛を知れば愚かになる。でも、それは罪じゃない! アルにもわかるはずだ。アーイシャ殿の為に、王宮の後宮に忍び込み……』

「黙れ! 自らの首も絞めるつもりかっ!?」


エスカレートする兄弟に、「ここは病院なのよっ。ふたりとも黙りなさい!」一喝したのは舞だった。


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