琥珀色の誘惑 ―王国編―

(19)恋の病は治らない

病室内は一瞬静まり返った。

さすがのミシュアル王子も、ラシード王子につられて言い過ぎたと思ったらしい。

フォローのつもりか、今度はとんでもないことを言い始めたのである。


「わかった。では、こうしよう。ターヒル、すぐに在米大使館に連絡を取れ! ジョー・ブライトンを、我が国に連行せよ。王女の娘を誑かした罪を償ってもらう」

「償うって……どうするの?」


舞は心配になってミシュアル王子に尋ねた。



クアルン王国の法律では、女性の純潔を奪った時は『結婚が義務』のはず。そう思った舞は、ラシード王子の治療が終わるまでの間、ターヒルから色々話を聞いたのだ。

もし相手の男が既婚者であったり、逃げたりした場合は、問答無用で刑務所に収監される。それに罰金と慰謝料も科せられるという。

だが、


「法律の適用はクアルン国内に限られます。或いは、男性にクアルン国籍があれば、海外で犯した罪にも適用されますが……」


他にも、敬虔なムスリムであれば別だという。コーランを遵守し、相手が純潔であるとわかった時点で結婚を申し込むだろう――ターヒルはそう言った。



舞がターヒルから聞いた話もつけ加えると、ミシュアル王子は渋い顔をしつつ答えたのである。


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