琥珀色の誘惑 ―王国編―
舞がさらに言おうとした時、


「僕が……僕がライラの娘の父親だ。ライラの純潔を奪ったのはこの僕だ! 僕が責任を取って結婚する。マッダーフに、僕の娘を返せと言ってくる!」


ラシード王子は肋骨にひびが入った体で、ベッドから降りようとする。


(ラシードってばカッコいい!)


舞は思わず、賞賛の言葉を口にしようとした。

ついでに、後宮で襲われたことはチャラにしてやろう、と思ったくらいだ。

だが、


『やめて、シド。お願い……』

『やめない。僕はアッラーに誓ったんだ。どんな時も君の味方になるって。……マフムードの時みたいに、僕を頼ればよかったんだ。いや、僕のせいだよ。僕が無理矢理、君を奪ったんだ』


ふたりのアラビア語はターヒルが訳してくれる。直訳なのでムードは皆無だが、そこは舞の脳内変換だ。


『シド、十四歳の時とは違うわ。わたくしはあなたを利用したのよ。小さな頃からずっと……アルが好きだったから。アルに近づく為に、あなたと仲良くしたのよ』

『でも、僕は知っている。アルがアーイシャ殿を連れ帰った時、マッダーフは僕に言ったんだ。まだ君を妻にする気があるのか、と』


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