琥珀色の誘惑 ―王国編―
「たった三十分じゃない。女の子なら二時間くらい普通よ。まあ、クアルンからじゃ電話代が幾ら掛かるかわからないけど……ひょっとして飛行機から掛ける電話って高いの?」

「舞、私を誰だと思っている!」


お金の心配をされたことに怒ったらしい。でも、違うなら何をそんなに怒っているのだろう? 舞はそれがわからなくて尋ねてみた。


「じゃ、なんで怒ってるわけ?」

「電話は毎日好きなだけ掛けると良い。但し、それは私がお前の傍に居ない時だ」

「居たら駄目なの? それって“夫の隣に座る”っていうのと同じで、そういう決まりになってるとか?」

「……お前は、私と話すより電話のほうが良いのか? 私の優先順位は家族や友人以下か?」



普通のプライベートジェットがどうなっているのか舞は知らない。

テレビか何かで、空飛ぶ応接室、という話は聞いたことがある。だが、ミシュアル王子の専用機には……巨大なベッドがあった。

この場合、空飛ぶスイートルームだろう。


ベッドルームの横には応接室みたいな部屋があり、そこはSPたちが待機するスペースになっている。

そのため、とても飛行機内とは思えない空間に、ミシュアル王子と舞はふたりきりでいた。


大きさはキングサイズだがベッドのデザインは至ってシンプル。その横には同じようにスタンダードなソファセットがあった。当然、王太子専用椅子、という物もあり、ミシュアル王子はそこに座っている。


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