琥珀色の誘惑 ―王国編―
「お前はまた!」


ミシュアル王子は憤怒の形相で睨んでいる。

だが、舞も負けてはいない。仁王立ちで睨み返した。


「だったらアルは何? ライラの子供が“恥ずべき存在”なら、自分は何なの? ライラを馬鹿にするってことは、ヌール妃を馬鹿にすることよ。あなたを“恥ずべき存在”にしないために、国も家族も友達も、将来の夢も全部捨ててこの国に来たんじゃない! 日本人の感覚じゃ、正妃以外は愛人と一緒よ。それでもこの国のルールに従って……。誰のおかげで、王太子でございっていばっていられるのよっ!」


舞は思い切り怒鳴ったので頭がキンキンした。

ふと気付けば、涙でミシュアル王子の姿が歪んで見える。

でも言いたいことを言ったので後悔はない。


そんな舞の足下から小さな声が聞こえた。ライラである。


「ア、アーイシャどの……お気持ちはありがたいのですが……。早くお詫びを言われたほうがよろしいわ。ご存じなかったのでしょうけれど……王太子殿下のご出生については」


ライラが言いたいことはわかる。

それは誰もが知っているが、ミシュアル王子に面と向かって言ってはいけないこと――禁句だった。


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