琥珀色の誘惑 ―王国編―
『アル! アル、待ってくれよ』


ラシード王子としては兄の行動が理解出来ない。

肋骨三本にひびが入っている弟を病院のベッドから引っ張り出し、ジェットヘリで首都に戻るなりコレである。

ライラの命を救ってやりたい。願わくは、娘と暮らせるようにも。欲を言うなら、自分の妻にしたかった。

その為なら、彼は自身の名誉と命を引き替えにするつもりだったのだ。

だが、ミシュアル王子の名誉まで傷つける訳にはいかない。ましてや、国民を戦争に巻き込むなど論外だ。


ラシード王子はそれとなく察していた。

なんと言っても、長い間、ライラだけを見続けてきたのだ。ライラが純潔を失ったのかも知れない、と。

ただ、こんな事情があるとは思わず、子供のことは彼にも驚きだ。


しかし、それでもラシード王子には諦めることが出来ない。


とはいえ、ライラは偽りの純潔という手段を用いてまで、王太子を騙そうとした。

未遂とはいえ、舞にまで手を掛け……。本来なら、身分剥奪・財産没収の上、国外永久追放くらいで済めば御の字と言うものだ。


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