琥珀色の誘惑 ―王国編―
アッラーの誓いは可能な限り守ってきた。

特に、国内においては例外なく守ったはずだ。

そして、ライラの罪は許しがたいものがある。投獄は厳しいまでも、国外追放は当然のケースであろう。


だが、舞が許せと言うのなら、ミシュアル王子には譲歩せざるを得ない。

それに、舞の言うことも一理ある。ミシュアル王子に流れる日本人の血が、閉鎖的な自国の現状を憂いていた。


父である国王は、前王や前王太子の悪行を打ち消すことに焦った。国民の不満を全て拾い上げ、急激な変化を求めた。

しかし、檻の中で生まれ育った動物が、いきなり野生に戻されたようなものである。全員が逞しく利口に生きられるはずがない。

ミシュアル王子自身、何度か国王の前で提言したのだ。

まずは初等教育から男女同席で始めることを。

もちろん、コーランの教えは大事にすべきだ。アバヤやヒジャブまで撤廃する必要はない。だが、国外ではヒジャブの着用を巡って騒動が起きているのも事実。これに関しては、近隣のイスラム諸国に足並みを揃え、義務を任意に変える方向で動き始めた。

それと、舞にも伝えた女性の自動車運転免許取得に関しても認める方向だ。


そして、何よりミシュアル王子が変えたいと望んでいるのは、王室外交だった。


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