琥珀色の誘惑 ―王国編―
「私は取り上げられるような、ふしだらな真似は致しませんっ!」

「じゃあ、もし、無理矢理襲われたら? それで子供が出来たらどうするの? ムスリムはそれでも中絶は許されてないんでしょう? ターヒルとも結婚出来なくなって……子供とも離されて」


舞の質問にシャムスはキュッと唇を噛み締めた。

そんなシャムスに舞は言葉を付け足す。


「ごめん。でも、もし自分が同じ立場になったら、って。もしもだけど……アルとそうなって、でも第二夫人は嫌だって言ったら、子供は置いて日本に帰れって言われるんでしょう? なんか、切なくて。そんなのは止めて欲しい。ちゃんと女性の、母親の話とか、言い分だって聞いて欲しいって」 


そこまで言った時、急激に舞の胸は熱くなった。シャムスの顔が歪んでよく見えなくなる。


「そう思っただけなのに……なんで、アルとライラが、本当に結婚しちゃうの」


後から後から噴水のように吹き上げてきて、舞の涙は止まらなくなった。


「アーイシャ様……」


シャムスまで舞に抱きついて泣き始める。このままだと、結婚式が終わるまでにオアシスが一つ出来上がりそうだ。

だがその時、舞はシャムスから離れ、すっくと立ち上がった。


< 324 / 507 >

この作品をシェア

pagetop