琥珀色の誘惑 ―王国編―

(24)奇跡、お届けします

舞は必死でその手を振り払おうとする。

だが背後の人物は、もう片方の腕を舞の体に回した。舞は両腕ごと抑え込まれ、身動きが取れない。そのままテントの陰に引き摺り込まれた。


(何よ……誰よ! お願いだから離してよっ! でなきゃアルが)


「まったく……私を信じると言いながら、なぜ迎えに行くまで待てない。どうしてお前は、少しの間もおとなしくしていられないのだ?」


聞き慣れた低めのバリトンが、舞の鼓膜を震わせた。

花婿であるはずの彼が、なぜここにいるのだろうか。

舞にはさっぱりわからない。でも……。


「騒ぐな。暴れることも許さん。いいな」


舞はコクコクと首を縦に振る。

そして体の拘束を解かれた瞬間、彼女は振り返った。


そこにはいつもと同じ、白一式を身に着けたミシュアル王子がいた。

彼は舞の体を隠すように、広場に背を向けている。儀式の様子を気にしながら、片腕で彼女を抱き締めていた。


「な……んで? どうしてアルがここにいるの? だって……ライラを正妃にって」


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