琥珀色の誘惑 ―王国編―
マッダーフが広場から出ようとしたその時、彼の眼前にミシュアル王子が立ちはだかった。
瞬く間に、周囲に緊張が走る。
マッダーフの両脇には、裾の短いトーブを着た兵士がピッタリと寄り添う。彼らはふたりとも大きめのジャンビーアを手に持ち、王太子を前にしながら鞘に手を掛けていた。
兵士なのに銃を持ってないんだ、と舞は不思議に思ったが……部族の野営地に立ち入るとき、銃の携帯は許可されない、と知った。
それを無視する状況は、暴動や内戦、戦争なんていう物騒な事態以外ではありえないらしい。
長い白黒の髭をたくわえたマッダーフは、ライラの父というにはかなり年配に見える。
刻まれた皺の奥で、黒い瞳がギョロリと動き……ミシュアル王子を射殺しそうな勢いで睨んだ。
「舞、私から離れるな」
舞がミシュアル王子の真後ろに立った途端、囁くように言われる。
(何? 何なの? 一体、何が始まるのっ!?)
口をきつく結びながら、舞は胸の奥で叫んでいた。
瞬く間に、周囲に緊張が走る。
マッダーフの両脇には、裾の短いトーブを着た兵士がピッタリと寄り添う。彼らはふたりとも大きめのジャンビーアを手に持ち、王太子を前にしながら鞘に手を掛けていた。
兵士なのに銃を持ってないんだ、と舞は不思議に思ったが……部族の野営地に立ち入るとき、銃の携帯は許可されない、と知った。
それを無視する状況は、暴動や内戦、戦争なんていう物騒な事態以外ではありえないらしい。
長い白黒の髭をたくわえたマッダーフは、ライラの父というにはかなり年配に見える。
刻まれた皺の奥で、黒い瞳がギョロリと動き……ミシュアル王子を射殺しそうな勢いで睨んだ。
「舞、私から離れるな」
舞がミシュアル王子の真後ろに立った途端、囁くように言われる。
(何? 何なの? 一体、何が始まるのっ!?)
口をきつく結びながら、舞は胸の奥で叫んでいた。