琥珀色の誘惑 ―王国編―
儀式の最中に飛び込んできた舞に、ミシュアル王子は驚くと同時に安堵していた。
この期に及んで「第二夫人でいい」と言われては、彼のこれまでの苦労が水の泡だ。誓いを守るために、ミシュアル王子はあらゆる手段を使い、尽力してきたのだから。
とはいえ、マッダーフが従わねばジャンビーアを抜くことになるかも知れない。
そんな場所に舞を置きたくはない。しかし、何も説明せずに押し返しては……何をするかわからないのが舞だ。
それくらいなら自ら守ったほうが安全というもの。彼は咄嗟にそう判断したのだった。
『これはこれは王太子殿下。よくも私を騙してくれましたな』
マッダーフは精一杯の虚勢を張り、頬を歪ませて言った。
『騙した、だと? 人聞きの悪いことを』
『王太子ともあろう方が見苦しい。殿下自身が申されたのですぞ、私の前で“ライラを第一夫人とする”と。お忘れか?』
その言葉にミシュアル王子はフッと笑みを浮かべる。
『忘れてなどおらぬ。だが、“私の”と言った覚えはないぞ。何のために、ラシードを同行したと思っている。第一夫人の言葉に平静を失い、確認を怠ったのはお前だ』
この期に及んで「第二夫人でいい」と言われては、彼のこれまでの苦労が水の泡だ。誓いを守るために、ミシュアル王子はあらゆる手段を使い、尽力してきたのだから。
とはいえ、マッダーフが従わねばジャンビーアを抜くことになるかも知れない。
そんな場所に舞を置きたくはない。しかし、何も説明せずに押し返しては……何をするかわからないのが舞だ。
それくらいなら自ら守ったほうが安全というもの。彼は咄嗟にそう判断したのだった。
『これはこれは王太子殿下。よくも私を騙してくれましたな』
マッダーフは精一杯の虚勢を張り、頬を歪ませて言った。
『騙した、だと? 人聞きの悪いことを』
『王太子ともあろう方が見苦しい。殿下自身が申されたのですぞ、私の前で“ライラを第一夫人とする”と。お忘れか?』
その言葉にミシュアル王子はフッと笑みを浮かべる。
『忘れてなどおらぬ。だが、“私の”と言った覚えはないぞ。何のために、ラシードを同行したと思っている。第一夫人の言葉に平静を失い、確認を怠ったのはお前だ』