琥珀色の誘惑 ―王国編―
ミシュアル王子の言葉に、浅黒いマッダーフの肌が更に黒く染まった。


その為に怪我人のラシード王子を病院から追い立て、マッダーフとの話し合いの場に立ち合わせた。

ラシード王子に事情を説明しなかったのは、彼が本気で驚く姿をマッダーフに見せたかったからだ。その上で即断を迫る。

古ダヌキのマッダーフのことだ。ラシード王子如きの猿芝居なら、すぐに見抜かれてしまうだろう。

もちろんライラも不意打ちだ。

舞は無条件でライラを信用し始めていた。だがミシュアル王子にとって、彼女はもう信頼に値する女性ではない。マッダーフに通じていないという保証はなかった。


『マッダーフ、お前はラシードとライラの結婚を祝福する為、ここに来たのだ。すぐに祭壇の前に戻れ。これは命令だ』

『……仕方ありませんな。そうなれば、ラシード殿下を息子として後見致しましょう。ミシュアル殿下は非常に才知に長けたお方だ。私如きの後見など必要とされぬでしょう』


その言葉はミシュアル王子の廃太子を示唆していた。


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