琥珀色の誘惑 ―王国編―
だがそれだと、次期当主に強大な力が移るだけじゃ……と舞は心配したが。


「ワーフィルの父は正嫡でありながら、当主の座を庶出のマッダーフに奪われたのだ。そしてワーフィルなら軍を動かす力を持たない」


マッダーフには側室に産ませたたくさんの息子がいた。その誰かに次の当主を譲ろうとしていたらしい。

だが今回、正統性を理由に王家がワーフィルに味方した。

マッダーフが無断で軍を動かしたことは充分失脚の理由となる。それはライラとは別件だ。


「掘りおこせば、マフムード前王太子暗殺疑惑まで明らかになるだろう。マッダーフもそこまで愚かではあるまい」 


そんなことを、ミシュアル王子が素早く説明してくれた。



マッダーフは無言で自身のジャンビーアをヤイーシュに渡した。

そのまま、うなだれた様子で祭壇の前に戻って行く。その後ろ姿は、ほんの数分前とは別人のようだ。

舞は黙ってミシュアル王子のトーブを握り締めたのだった。


直後、王子が広場に向かって『儀式を続行せよ!』と叫ぶ。すると、アル=エドハン一族の男たち全員がジャンビーアを地面に置いた。

どうやら、王子の命令があれば剣を抜いて戦う準備をしていたらしい。

広場全体にホッとした空気が流れたのだった。


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