琥珀色の誘惑 ―王国編―
「ヤイーシュ、ご苦労だった」 

「はっ! あちらの仕度も整っております」


ヤイーシュはアル=バドル一族の中に居る時とは違って、白いトーブを着ている。

どうやら側近を完全に辞めた訳じゃないらしい。ミシュアル王子の前に跪き、臣下の礼を取っていた。

色々聞きたいが、今、ミシュアル王子を怒らせたくはない。そんな思いから、舞は黙ったままだ。


「ヤイーシュ、怪我は大事ないか?」

「――殿下?」


ヤイーシュは驚いた顔をしている。

すると、ミシュアル王子は舞の腕を一層強く握り締め、


「“これ”が気にしておる。それと……私の婚約者を救った礼を言う」


ミシュアル王子にすれば最大限の譲歩だろう。

舞のために尋ねてくれたのだ。そして、彼女に代わってお礼を言ってくれた。それが嬉しくて、舞は胸が熱くなる。


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