琥珀色の誘惑 ―王国編―
「この辺りはそれほど気温が落ちないのだ。そのおかげで、オアシスも近くにある。それほど深くなく、日中は泳ぐのに最適だ」

「へぇ、泳げるんだ。でも、わたしは水着なんて持って来てないし」

「そんなものは不要だ。オアシスでは誰もが裸で泳ぐ」


(クアルンにヌードビーチもどきがあるのっ!?)


舞は驚いて声も出ない。

でも、どうやら……時間を決めて男女交代で使うらしい。日本のように、毎日シャワーなんて言語道断の国である。

そんな砂漠の民にとって、オアシスは文字どおり『憩いの場(オアシス)』なのだった。



「ねぇアル……さっきの兵士たち。死んじゃったの?」


舞は何となく気になっていたことを尋ねてみる。


自国の王太子に剣を向けたのだ。ヤイーシュの時みたいな決闘とは訳が違う。

ミシュアル王子らが吊るしているジャンビーアは、決して飾りじゃない。舞もそのことは充分わかっている。


「祝いの日を血で汚したくはなかった。無傷とは言い難いが、致命傷は負わせてはいない」

「そうなんだ。良かった」


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