琥珀色の誘惑 ―王国編―

(27)すべてを愛に変えて

一つのテントに案内され、舞はあらためてその男性を見つめた。

瞳は黒というよりグレーに近い。髪は黒だが、どうやらかなり長いみたいだ。グトラの裾は足元近くまであり、背中を覆い隠していた。

舞が目にしたグトラは、白一色と赤白チェックの二種類だ。長さは肩より少し下くらい。しかし、この男性のグトラはなんと赤。そしてイガールが白であった。

一体、このサディークと呼ばれた男性は何者なんだろう。


(なんで……父なわけ? お父さんの代理ってこと?)


中途半端な説明のまま、ミシュアル王子はサディークとふたりで儀式の段取りを話している。舞がいい加減イライラし始めた時だった。


「アーイシャ様!」


一族の女性に案内され、テントに入って来たのはシャムスだ。


「おめでとうございます、アーイシャ様! やはり、王太子殿下は素晴らしいお方です。ターヒル様と一緒に、生涯尽くさせていただきます!」


シャムスは舞とミシュアル王子の結婚を聞いたのか、目を潤ませ興奮状態だ。


「あ、ありがとう。心配掛けて……とりあえず、第二夫人でもいいかなって」


すると、シャムスは目をまん丸にして声を上げた。


「まあ、ご存じないのですか?」

「え……何を?」


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