琥珀色の誘惑 ―王国編―
言葉にされたら、なんだか“邪な思惑”があったように聞こえるのが不思議だ。

ミシュアル王子の体に顔を押し付けられた時、聞こえたのは激しい鼓動だった。彼の指先は活火山のように熱を帯びて……。


(キスくらいしてくれても良かったのに)


ついついそんな気持ちが浮かび、舞は慌てて打ち消した。


女性の純潔にやたらうるさいクアルンだ。十八歳のシャムスなど当然、純潔だろう。他の女官は寡婦だというから多少は融通が利くかもしれない。

だが、ヘリの中みたいに、後ろを向けって訳にはいかないと思う。

 
「ライ、ライラは自分が第一夫人って言ったわ。シャムスは候補がたくさんいるって。そもそもライラって」


舞は今度こそ落ちないようにと、白い布をグルグル巻きにして、ミシュアル王子を振り返った。

すると、今度は王子のほうが服を脱ぎ始めている。


「な、なに? 何してるの?」

「サラートの時間が近づいた。私も身を清めねばならない。舞……お前が望むなら、共に入ることを許す」

「え、遠慮しますっ」


舞はシャムスと一緒に慌てて浴室を飛び出した。


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