琥珀色の誘惑 ―王国編―
それを考えたら三十年近く前、王妃として認められたヌール妃の時も凄かったのかも知れない。


カイサル国王が王弟で、ヌール妃の母がクアルン人だった、というのも大きいだろう。

だが、ミシュアル王子が王太子に立つことは、舞の想像以上にとんでもないことに違いない。


その証拠に、ラフマーン王国では日本人女性が産んだ娘は王女として認められたものの、三十年近くも幽閉状態だったという。彼女はサディーク王子にとって大伯母にあたり、黒髪の美しい女性だと教えてくれた。



「でも、どうしてラフマーンのプリンスが私の父親代わりなんでしょう?」


舞の質問に答えたのはサディーク王子ではなく、ミシュアル王子であった。


「舞、王族の第一夫人となる条件を覚えているか?」


王宮の後宮内で、ヌール妃に聞いた話を舞は思い出そうとした。

確か――三代続けてクアルン国民であること。

そう答えた舞に、ミシュアル王子は更なる質問を投げかける。


「そうだ。だが、例外が存在する」


――同じアラブ国家の王女である場合。


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