琥珀色の誘惑 ―王国編―
髪飾りを外した後は、白絹の花嫁衣裳の紐を解き、一枚一枚脱がせ始める。その指はどこかもどかしく、手馴れた仕草とは程遠い。


「決まっておろう。これより、初夜を迎えるのに衣装は邪魔だ」


と言いつつ、まるで引き千切りそうな勢いだ。


アル=エドハン一族の女性の手により、何年も掛けて舞のために織られた衣装。それを粗雑に扱うなんて、舞には我慢出来ない。

彼女は自分で脱ぐと言うが――「花嫁の衣装を脱がせるのは夫の権利だ!」と言い、譲ってくれない。

それに、ミシュアル王子は左肩を怪我している。舞はいたわるつもりで……そんなに急がなくても、傷が良くなってからのほうが、と口にした。

すると、


「いい加減にいたせ! これ以上、一夜とて我慢出来るものかっ!」

「ま、待って、アル」

「待てぬ!」


と、ミシュアル王子はキッパリだ。

だが彼以上に、舞にも理想がある。いや寧ろ、思わせぶりな王子の言動が、舞の夢や憧れに拍車を掛けた、と言う方が正解だろう。


「絨毯の上で情熱的にって憧れるシチュエーションだけど……。初めては寝台の上がいいっ!」


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