琥珀色の誘惑 ―王国編―
「ああ……確かに」


やっと、ミシュアル王子も落ち着きを取り戻したらしい。


「私としたことが、うっかりしていた。初夜に相応しい寝台が用意してあるはずだ」


それは、砂漠のテントの中で、お目に掛かれるとは思わなかった代物だ。

テントはスイート仕様で、次の間の中央にクイーンサイズのベッドがドンッと鎮座していた。ロータイプで余計な飾りは一切ない。

ただ、シーツの肌触りもスプリングの跳ね具合も実に素晴らしい。

王子に抱えられ、その真ん中に下ろされた瞬間、舞はそんなことに感心していた。


花嫁衣裳はあらかた脱がされた状態である。

そして、ちょっとはしたないかな、と思いつつ……。膝下まで落ち足首に絡まった衣装を、片方のつま先で外してベッドの外に押し出した。

舞を下ろして、ミシュアル王子は一旦離れようとする。でも舞は、彼の首に手を回したまま、ちょっとだけ甘えてみたくなった。


「ね、アル。キスして」

「……私が脱ぐまで待て」

「やだ、わたしとキスしたくないの?」


< 365 / 507 >

この作品をシェア

pagetop