琥珀色の誘惑 ―王国編―
部屋の灯りは小さな蝋燭だけ……。

その揺らめく暖かな光が、ミシュアル王子の顔を照らした。


ちょうど一ヶ月前の夜、一瞬で舞を魅了した琥珀色の瞳がそこにある。


『結婚生活に必要な愛は惜しみなく与えよう』と言い放った尊大さも……

『愛情以外に動機があったからといって、責められる謂れはない!』と開き直る不器用さも……


この人の全てがいとおしい。


舞は王子の頬を両手で挟み、自ら唇を寄せた。

軽く啄ばむようなキスは長くは続かなかった。なぜなら、ミシュアル王子が舞から離れるのを諦め、彼女のキスに応え始めたからだ。

結婚の儀式を終えた安堵感が、これまで抑え続けてきた欲求に火を点ける。

決して小柄とは言えないふたりは互いの唇を奪い合い、ベッドの上を転がった。気付けば、上下が入れ替わっている。彼のグトラは外れ、焦げ茶色の短い髪が見えていた。


「私の上に乗り、罪に問われないのは世界中でお前だけだ」

「お尻に敷いちゃってもいい?」


舞は冗談めかして尋ねる。


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