琥珀色の誘惑 ―王国編―
どうやら本気で、未来の妻をベッドで悦ばせないと、と考えていたらしい。


「どんなにエッチが慣れてても、好きじゃない人には触って欲しくない! 痛くても我慢できるのは……あなたが好きだから。愛してるから、こうして傍にいられるだけで幸せ。それが“オンナ”なの」


舞はそう言うとミシュアル王子のがっしりした首に手を回し、力一杯抱きついた。


大きく出た喉ぼとけも、少し剃り残しがあってチクチクする顎も、全部が男らしいと感じるのはどうしてだろう。

白いトーブには、お祈りで焚く香の匂いが染み込んでいる。そして彼の肌から、灼熱の砂漠を感じ……。

身も心も夫婦になったせいかも知れない。舞は痛む場所に王子の名残を感じ、身体が熱くなる。



「舞……首筋に息が掛かる。もう少し離れるのだ」

「どうして?」


ラクダに乗っているだけなのに、ミシュアル王子の呼吸は乱れていた。それを知りつつ、舞はフーッと彼の耳に息を吹きかけてみる。


「なっ!? ここでは、唇を重ねることが出来ぬのだぞ!」


その言葉に舞はびっくりだ。


なんと言っても、最初にキスされたのが真昼の公園である。周囲に人がいても平気なんだとばかり思っていた。


< 380 / 507 >

この作品をシェア

pagetop