琥珀色の誘惑 ―王国編―
遊牧民族に比べ、定住民族のほうがコーランを遵守している確率が高い。結婚まで童貞というケースも少なくないのだ。

拙さを責めれば、敬虔なムスリムである彼らの信仰心を妨げ、浮気に繋がってしまう。また、男としての面目を傷つけては、後々の結婚生活に響くことは間違いない。


花嫁はそれを理解して、予め覚悟して初夜に挑む。

王太子の花嫁にも一族の女性が伝える予定であった。だが、例の件で全ての段取りが狂ってしまい……。



「うわぁ、すごーい!」


不意に見えた小さな森に、舞は歓声を上げた。

砂漠は平坦に見えてかなりの高低差があった。オアシスは砂丘の間にいきなり姿を見せる。

ナツメヤシをはじめ木々が茂り、その中心に泉が湧き出ていた。


ラクダから降りるなり、舞はオアシスの泉に駆け寄る。


「アル、来て! ほら、あったかーい」


その無邪気な笑顔を眺めつつ……。


可愛い妻に煽られ、いきり立った邪念を必死で宥めるミシュアル王子だった。


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