琥珀色の誘惑 ―王国編―
「ある程度硬いからこそ、オアシスが維持できているのだ。他の砂地と同様なら、木は生えないだろう」

「そう言えばそうか……あ、蛇っていない?」


急に身震いして更に強く抱きついてくる。

どうやら、アル=バドル一族の野営地で“サハラツノクサリヘビ”に咬まれそうになったことを思い出したらしい。


「危険なのは夜間と早朝だ。夜行性の彼らは、昼間に襲ったりはしない。安眠を妨げない限りは」


そのことはシャムスに教わったはずだが、と確認するが……。笑ってごまかす所を見ると、それほど重要だと思わなかったようだ。


「シャムスって言えば、今朝いなかったでしょ? ひょっとして、ラシードたちが式を挙げた野営地に戻ったの? 後、サディーク王子は? それとヤイーシュも……」


最後に付け加えた言葉が気になり、


「お前が一番気になるのは、ヤイーシュの居場所ではあるまいな?」


ついつい声音がきつくなる。


「もうっ! だったらいい」


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