琥珀色の誘惑 ―王国編―
柔らかなものを押し付けられていた腰の付近が、フッと空白になる。

改めて見つめると、ちょうど舞の胸の頂が隠れる程度の水深であった。

彼女の動きに合わせて水面が揺れ、木々の隙間から射し込む光に、桜色の先端が見え隠れする。


「シャムスは、ダリャの王宮で行われる晩餐会と披露宴の仕度に戻った。ヤイーシュとターヒルは即位の儀式の準備に奔走している。サディークはラフマーンに帰国した。披露宴には再び訪れる予定だ。それと……ラシードとライラも、無事に結婚と初夜の儀式を終えたらしい」


舞の後をゆっくり追いながら、ミシュアル王子は答える。

すると、ラシードたちのところで舞がピタリと止まった。


「ねぇ……ライラはどうなるの?」

「何がだ」

「だって、初夜の儀式って……えっと、あの」


舞は言い難そうにするが、おそらくは敷布を広場に掲げることだろう。


「ライラが純潔でないのは承知の上で結婚したのだ。ラシードが上手くやるだろう」

「え? じゃあ、ラシードたちも同じようにするの?」

「当たり前であろう。奴も一族の名でシークの称号を持っている。儀式はひと通りこなすのが掟だ」


そう答えながら、ミシュアル王子は胸に冷ややかなものを感じていた。


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