琥珀色の誘惑 ―王国編―
一方、舞である。

いきなり麻袋を頭から被せられ、叫ぶ間もなかった。アラビア語が飛び交い、あれよあれよと言う間に馬に乗せられてしまう。

頭からすっぽり隠れているので、周囲のことは全く判らない。


そう言えば少し前、砂漠では人攫いが今でも横行していて、若い女は性奴隷として売り買いされると聞いたような……。

ミシュアル王子の従兄にあたる前王太子も、その性奴隷をラフマーンの闇組織から買ったとか。ラフマーンの王室から婚約破棄されたのは、それが原因だと聞いた。
 

(ってことは……何かコレってヤバくない? わたしって、売られちゃったりするわけぇ~~)


馬の背に乗せられている状態から、途中でもっと広い場所に移された。どうやら、馬車の荷台らしい。その時、舞の背後で女性の声が聞こえたのだ。


『だ、誰? 誰かいる?』


なんとなく単語を繋ぎ合わせ尋ねてみると……。


『アーイシャさま。私、ナーヒードです。ご無事で良かった』


それは一緒にいた一族の女性の声だった。


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