琥珀色の誘惑 ―王国編―

(7)ベッドの誘惑

最初、舞には何が起きたのかわからなかった。

ここはこの国の王太子の宮殿で、しかも後宮。王族の中でも女性であれば、かなり自由に王宮内の後宮まで出入り出来るという。

だが、男は別。

たとえミシュアル王子であっても、母親の住む王の後宮には一切足を踏み入れることは出来ない。舞はそんな話をシャムスから聞いていた。


それにも拘らず、舞の口を塞ぐのは間違いなく男の手だ。

だが、力ずくといった悪意は感じられない。唇と指の間には隙間があり、舞はそこを狙って思い切り噛み付いてやろうとした。


その時――「静かに。私だ。騒いではいけない」


(ア、アル? なんで? どうして?)


「声を上げない、と約束してくれ。そうしたら手を離して説明する」


舞はコクコクと即座に頷く。

大きな手が顔から離れ、振り返った舞の目に映ったのは……横顔を月に照らされたミシュアル王子だった。


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