琥珀色の誘惑 ―王国編―
いい加減、舞も疲れ果てていた。

縛られていないとは言え、何時間も同じ体勢は辛い。幸い、スッポリ包まれているので寒くはないが、その代わり周囲の状況はまるで判らない。

すると、馬車の揺れがピタリと止まり、すぐ近くでアラビア語が聞こえ始めた。

何処だか判らないが、連中の目的地に着いたのだ。そう思うと、さすがの舞にも緊張が走る。背後のナーヒードは再び泣き始めた。
 

そこに、この騒ぎである。

舞の耳には建物の解体現場にいるような凄まじい音が聞こえた。


(ちょっと、一体ココってドコ? わたしたちってドコに連れて来られたのっ!?)


エコーが掛かったような大音量でアラビア語まで流れ始める。

まるで、カラオケルームでスピーカーの前に立ってるような感覚だ。ついには頭がガンガンして、舞は両手で耳を塞いだ。


しばらくすると、いきなり間近に複数の男たちの声が聞こえた。全部早いアラビア語で、内容はさっぱり判らない。

両足と肩の辺りを持たれ、荷物のように運ばれた。


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