琥珀色の誘惑 ―王国編―
「どうぞ、お掛けになって、ライラ」
礼儀に則り、立ったままでいるライラに舞は声を掛ける。
以前、ヌール妃がやっていたように、舞が女性たちに指示する立場になった。王族女性の中で最高位にいる舞が命じなければ、王宮や後宮において女性たちは座ることも出来ない。
慣れない舞には苦痛だが、これも王妃の役目である。
舞はライラが座ったのを見計らい、口を開いた。
「小さなアーイシャとお会いになったとか」
部屋の隅には数名の女官が控えている。“小さなアーイシャ”の真相はクブラーも知らないことだ。迂闊なことは口に出来ず、もちろん舞も慎重に尋ねた。
だが、当のライラは慣れているのか、或いはいい根性をしているのか……華やいだ笑顔で答えて見せた。
「ええ、そうですの。昨日ようやく、小さなアーイシャ様とお会いできましたのよ! わたくしたち、すぐに仲良くなりましたわ」
世間では、皮肉なことにライラは悲劇のヒロインと言われている。
クアルン一の名門に生まれ、正妃に最も相応しい、と言われ続けてきたのが彼女だ。ところが、ミシュアル王子は外国人の許婚――舞を正妃に迎えるため、厄介払いのようにライラを弟に押し付けた。
しかも、弟のラシード王子には結婚と同時に庶子の存在が明らかになる。
礼儀に則り、立ったままでいるライラに舞は声を掛ける。
以前、ヌール妃がやっていたように、舞が女性たちに指示する立場になった。王族女性の中で最高位にいる舞が命じなければ、王宮や後宮において女性たちは座ることも出来ない。
慣れない舞には苦痛だが、これも王妃の役目である。
舞はライラが座ったのを見計らい、口を開いた。
「小さなアーイシャとお会いになったとか」
部屋の隅には数名の女官が控えている。“小さなアーイシャ”の真相はクブラーも知らないことだ。迂闊なことは口に出来ず、もちろん舞も慎重に尋ねた。
だが、当のライラは慣れているのか、或いはいい根性をしているのか……華やいだ笑顔で答えて見せた。
「ええ、そうですの。昨日ようやく、小さなアーイシャ様とお会いできましたのよ! わたくしたち、すぐに仲良くなりましたわ」
世間では、皮肉なことにライラは悲劇のヒロインと言われている。
クアルン一の名門に生まれ、正妃に最も相応しい、と言われ続けてきたのが彼女だ。ところが、ミシュアル王子は外国人の許婚――舞を正妃に迎えるため、厄介払いのようにライラを弟に押し付けた。
しかも、弟のラシード王子には結婚と同時に庶子の存在が明らかになる。