琥珀色の誘惑 ―王国編―
結果、ライラは夫が外国人女性に産ませた庶子を娘として引き取った“妻の鑑”のように言われているのだ。


シャムスにすれば、その噂は許しがたいことらしい。


「王子のお子でもないのに、王女の称号を頂くなんて……恥ずべきことですわ! 私でしたら、とてもミシュアル様の前には立てません!」


主従関係とはいえ舞しか相手がおらず、シャムスもついつい不満が出る。

ライラの娘アーイシャはルナ・アサーニャと名前を変えられ、フィリピン国籍を取得していた。

今回クアルンに迎えるため、ルナはイスラムの名前“アーイシャ・ビント・ラシード・アール・ハーリファ”と王女の称号を与えられたのだ。

色々煩雑な手続きを必要としたため、アーイシャ王女がラシードの宮殿に入ったのは昨日のことだという。

舞は噂くらいしか耳にしていないが、


「金色の髪をした美しいプリンセスだそうです。それはもう……ラシード様によく似ておいでですとか!」


そう言ったシャムスの声は、理不尽なことに対する怒りに満ちていた。


(とりあえず、似てるって言うしかないんだろうな……)


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