琥珀色の誘惑 ―王国編―
そして、ミシュアル王子が好きにしていいのは、客であってもOKらしい。客は、正殿に泊まり、妻と娘を後宮に預ける。奪われても逆らいません、という絶対服従の意味もあった。
 

ちなみに見張りとは……未婚の女性に必ず付く女官のことだ。

建前としては、女性の名誉を重んじてのこと。

男性にすれば、純潔を奪った場合は妻にする、というルールさえ守れば名誉は傷つかない。逆に言えば、もし純潔でなければ“一夜限り”で捨てても許されるのだ。

そして本来の見張りの役目は、閨を訪れる主人と女性の様子を探ることにあった。

過去に、主人が酔って女性の部屋を訪れ、あれこれスル前に寝込んだのをいいことに、『純潔を奪われた!』と嘘を吐いた女性もいたらしい。

だが決して、与えられた部屋から女性が抜け出さないように見張ることではない。

ましてや、女性から夜這いを掛けるなど、あるまじき“ふしだら”だった。


「そ、それって……ライラとしちゃったの?」


ミシュアル王子の様子に、舞はおっかなびっくりで質問した。


「するわけがなかろう!」


押し殺した声で、それでもキッパリと否定する。


「だが、ライラと夜半に寝室でふたりきりなど……論外だ。何もせずとも彼女の純潔は疑われ、求婚者はいなくなるだろう」


苦虫を噛み潰したような顔でミシュアル王子は答える。


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