琥珀色の誘惑 ―王国編―
舞はそう思って納得したが、簡単には納得出来ない人間が実はもう一人、ミシュアル王子だった。



彼もアーイシャ王女と面会したらしいが、


「子供が男であったら、この手段だけは取らなかった。母上はともかく、父上は孫が出来たと喜んでおられる。……罪深いことだが、父上の病は深刻だ。それを思えば、親孝行になるのかも知れぬ」


複雑な顔で言っていた。



「カイサル陛下もお喜びで、わたくしにも『よろしく頼む』と申されましたの。必ずや、小さな王子殿下をお産み申し上げますと約束しましたわ」


(わたしってば、なんでこのライラが可哀想だと思ったんだろう?)


気の毒だと同情して、正妃まで譲ろうとしたのは舞だ。それはよく判っているが、もう少し感謝であったり、殊勝な態度を取ることが出来ないものだろうか? と思ってしまう。


(まあ、殊勝なライラなんて、想像も出来ないけど……)


誰にも文句が言えないので、舞も口の中でぶつぶつ言うしかない。

すると、ライラの口調が急に変わった。砕けた言葉で、信じられないことを言い始めたのだ。


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