琥珀色の誘惑 ―王国編―
ミシュアル王子はサディーク王子を伴い、グラスを片手に王宮広間からテラスに出た。

グラスの中身はオレンジジュース。ラフマーンでは外国人用にアルコールも用意してあるという。しかし、クアルンにおいては全員がジュースだけであった。


『新婚生活は上手く行き過ぎているようだな。何よりだ』


どうやら、ラフマーン国内に不法滞在した一件の嫌味を言っているらしい。

そんなサディーク王子にミシュアル王子は笑いながら答えた。


『ハスールで最高のホテルと聞いたが、ベッドのサイズが小さかったように思う。マットも硬過ぎだ。もっと上質な物を揃えよと言っておけ』

『不満が多い割りには、三十六時間も部屋に閉じ籠もっていたのは誰だ? 夜明けまでの予定ではなかったか?』


サディークは呆れた様子で頭を振る。


『王女の滞在だ。うるさいことを言うな』

『次はきちんと手続きを踏んでから来てくれ』


義父の言葉に、渋々『……判った』と答えるミシュアル王子だった。


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