琥珀色の誘惑 ―王国編―
(12)花嫁の反抗
ミシュアル王子の声が聞こえた気がした。
舞は大急ぎで日本風の檜風呂から上がり、体を拭くのもそこそこに飛び出す。
実は王宮に入ってから、ミシュアル王子と共に夜を過ごしていない。
王太子が王宮に入った後、即位の儀式が済むまでは『男女の交わりを断つ』という習わしがあった。さすがのミシュアル王子も夜は王宮内のマスジド(礼拝堂)に籠もり、アッラーに祈りを捧げていたのである。
たった二晩とはいえ、結婚してから離れて眠った夜はなかった。今夜は久しぶりに……と思い、舞は念入りに自分の体を磨いていたのである。
(もうっ! アルったら、祝宴抜け出してまで来なくたってぇ)
浮かれた舞の目に飛び込んで来たのは、顔を真っ赤にして怒るミシュアル王子だった。
「侮辱って何? 何をそんなに怒ってるの?」
「ライラに問われた時、私を褒めず、あろうことか夫を褒めるライラに同意したと言うではないかっ!? 何ゆえ、私を褒め称えぬ! 王宮女官らの前で、国王を蔑ろにする王妃が何処にいるのだ!」
ライラといえば、即位のパレードを見るため王宮の最上階で顔を合わせたときだろう。
舞は大急ぎで日本風の檜風呂から上がり、体を拭くのもそこそこに飛び出す。
実は王宮に入ってから、ミシュアル王子と共に夜を過ごしていない。
王太子が王宮に入った後、即位の儀式が済むまでは『男女の交わりを断つ』という習わしがあった。さすがのミシュアル王子も夜は王宮内のマスジド(礼拝堂)に籠もり、アッラーに祈りを捧げていたのである。
たった二晩とはいえ、結婚してから離れて眠った夜はなかった。今夜は久しぶりに……と思い、舞は念入りに自分の体を磨いていたのである。
(もうっ! アルったら、祝宴抜け出してまで来なくたってぇ)
浮かれた舞の目に飛び込んで来たのは、顔を真っ赤にして怒るミシュアル王子だった。
「侮辱って何? 何をそんなに怒ってるの?」
「ライラに問われた時、私を褒めず、あろうことか夫を褒めるライラに同意したと言うではないかっ!? 何ゆえ、私を褒め称えぬ! 王宮女官らの前で、国王を蔑ろにする王妃が何処にいるのだ!」
ライラといえば、即位のパレードを見るため王宮の最上階で顔を合わせたときだろう。