琥珀色の誘惑 ―王国編―
そんな彼の様子が舞には不思議でならない。やましいことがないなら堂々としていればいいだろう。


「じゃあ、出て行けって怒鳴れば? 騒ぎになっても、アルさえ身に覚えがなければ問題ないんじゃない?」

「ライラの名と共に私の名誉も地に堕ちる。それに、ライラの父……軍務大臣を敵に回すわけにはいかぬ」


名誉が重要なミシュアル王子にとって、許せぬ事態になるようだ。しかもライラ本人より、彼が気にしているのは父親のほうらしい。


「ってことは……人に知れたら、何もしてなくてもライラと結婚しなきゃならない、ってこと?」

「そうだ。やっとわかったか」


どうやら、ライラは捨て身の攻撃に出て来たらしい。

だが、舞の目に、あのライラが未経験というのが今ひとつ信じられない。彼女は舞より二歳上の二十二歳で、つい先日までオーストラリアに留学していたという。

ミシュアル王子にしなだれ掛かる仕草といい、爪を磨ぎながら獲物を狙う女豹そのものだ。

舞はそのことをミシュアル王子に告げるが、「あり得ぬ」と一蹴された。
 

(何よ、ソレ! わたしのことは散々疑ったくせに)


「ライラは愚かにも名誉と引き替えに私が手に入ると思っている。可哀想な娘だ。彼女が自ら立ち去るまで、私はここに居させてもらう」

「お好きにどうぞ! わたしは寝ます!」


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