琥珀色の誘惑 ―王国編―
「日本語を話せる者が減ったとはいえ、小さなアーイシャ様のことは迂闊に口に致しませんよう」


どっちが王妃か判らない態度で、ライラは舞に注意を促す。

ついつい、


「そうよねっ! バレたらラシードの第一夫人の座がパァだもんねっ!」


嫌味ったらしくライラに八つ当たりし、舞はすぐに落ち込んだ。


(そもそも、頼んだのはわたしだし……)


ライラに謝ろうとした舞だが、それより先に彼女が口を開いた。


「相変わらずですわね」


その声は妙に落ち着いている。ライラは続けて、


「嘘がバレたら夫の恥になりますわ。それだけでなく、お力添え下さった陛下の名誉も傷つけることになってしまいます。そしてこのルナ様も……」


ライラは一年ぶりに再会した我が子に敬称を付けて呼ぶ。それも、海外で付けられた名前だ。


「どうしてアーイシャの名前で呼ばないの?」

「ご自分のお名前をルナと覚えておいでなのです」


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