琥珀色の誘惑 ―王国編―
「アーイシャ様、私でも知ってますのに」


そう言うとシャムスは絶句した。


何でも世界的に有名なブランドで、ダイヤモンドの指輪なら日本円で百万円は下らないらしい。

言われてみればハリウッドスターの婚約指輪とかで、もの凄い金額を耳にしたような気もする。舞にはあまり興味のない話なので詳しいことは覚えていないが。


「婚約指輪なのかな? でも、もう結婚したんだけど……結婚指輪、とか?」


だが、結婚指輪であるなら式で交換しただろう。間に合わなかった、というような失態をミシュアル王子が許すはずがない。


シャムス曰く、クアルンの結婚には指輪を交換する習慣はない、という。

それは宗教の問題ではない。

事実、同じムスリムの国でも婚約式の時に指輪を贈り合うところもある。それを互いの右手の薬指にはめ、結婚式で左手の薬指にはめ直すのだ。

他にも、日本で言う結納品として指輪か腕輪を贈る国もあるとか……。


ただ、最近はどの国でも西洋ナイズされていて、キリスト教式のように指輪の交換を結婚式に取り入れたりしているそうだ。

とくに若い女性の間では、ブランド物の婚約指輪が憧れだという。


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