琥珀色の誘惑 ―王国編―
箱から取り出すと、ビロードのケースは中央から左右にパカッと開いた。

舞の予想通り、真ん中にファンシーヴィヴィッドピンクのダイヤモンドリングが納まっている。ハートシェイプカットでいかにも二十代の女性が喜びそうなデザインだ。

舞は恐る恐る手に取ってみる。台座がプラチナのせいかずっしりと重い。


(昔、露天で買った千円の指輪とは大違いだなぁ)


とんでもなく失礼なことを考えつつ、舞は左手の薬指にはめてみた。


「まあ、よくお似合いですわ。アーイシャ様」


シャムスはうっとりと見つめている。

その時、箱の中に白いカードが入っていることに気付いた。どうやら、ケースの下になっていたみたいだ。舞はその二つ折りのカードを取り上げ開いた。

そこには三行くらいのアラビア語が書かれている。一番下の署名が『ミシュアル』であることは何度も見たので判るが……。上二行は全く読めない。

舞は仕方なくシャムスに差し出した。すると、そこに書かれてあったのは……。


――オアシスで見つけた我が至宝、最愛の妻に捧ぐ  ミシュアル――


シャムスは単純に感動しているが、舞はその言葉に心当たりがあった。

ミシュアル王子はオアシスで泉の中に潜り、舞の脚の間を……。思い出すだけで舞は頬が熱くなる。


「まあ、お顔が赤いですわ。アーイシャ様、大丈夫でございますか?」


心配するシャムスに「何でもないから」と必死にごまかす舞だった。


< 458 / 507 >

この作品をシェア

pagetop