琥珀色の誘惑 ―王国編―
そこは婚約披露でも使われた六角形のホールだ。
床一面にクム産のペルシャ絨毯が敷かれている。オールシルクの、くすんだピンク色が独特の風合いを醸し出していた。半世紀ほど前から、ヨーロッパでも人気の工房の作品らしい。
今夜はクアルン王国新王妃誕生の祝宴ということもあり、参加者は全員クアルンの伝統的な民族衣装と決められていた。
色合いは様々だが、基本的にはチュニックを裾まで伸ばしたワンピースのようなデザインである。
女性たちは黒ずくめのアバヤを脱ぎ、後宮は煌びやかな世界に一転したのだった。
『王国の更なる発展と、聡明かつ勇敢なる国王の誕生に』
婚約披露のときはヌール妃の音頭で乾杯したが、今回は当然、国王第一夫人アーイシャ妃の役目である。
舞は覚えたてのアラビア語をとちらないように必死だ。
乾杯に続いて、王族女性が身分や年齢順に次々に舞の元を訪れる。それをライラが「前国王の従姉妹、サーラー王女です。去年夫を亡くされました」などと耳打ちしてくれる。
それに応えて、舞は「気を落とされませんよう」と日本語で言い、ライラが王妃に相応しいアラビア語に変えて相手に伝える。
床一面にクム産のペルシャ絨毯が敷かれている。オールシルクの、くすんだピンク色が独特の風合いを醸し出していた。半世紀ほど前から、ヨーロッパでも人気の工房の作品らしい。
今夜はクアルン王国新王妃誕生の祝宴ということもあり、参加者は全員クアルンの伝統的な民族衣装と決められていた。
色合いは様々だが、基本的にはチュニックを裾まで伸ばしたワンピースのようなデザインである。
女性たちは黒ずくめのアバヤを脱ぎ、後宮は煌びやかな世界に一転したのだった。
『王国の更なる発展と、聡明かつ勇敢なる国王の誕生に』
婚約披露のときはヌール妃の音頭で乾杯したが、今回は当然、国王第一夫人アーイシャ妃の役目である。
舞は覚えたてのアラビア語をとちらないように必死だ。
乾杯に続いて、王族女性が身分や年齢順に次々に舞の元を訪れる。それをライラが「前国王の従姉妹、サーラー王女です。去年夫を亡くされました」などと耳打ちしてくれる。
それに応えて、舞は「気を落とされませんよう」と日本語で言い、ライラが王妃に相応しいアラビア語に変えて相手に伝える。