琥珀色の誘惑 ―王国編―
『宴《うたげ》を楽しんでいるか?』


シーンとした空気を打ち破ったのはミシュアル王子の声だった。

いつも通りのトーブ姿で、グトラは被っていない。彼は国王として独特の威厳を発揮し、一瞬でその場を制した。

女性たちは一斉に両膝をつき、頭《こうべ》を垂れる。


(え? わたしもやるの?)


舞が戸惑った時、背後でライラが「王妃様はそのままで……」と教えてくれた。


「ほう、アーイシャ王女の髪は見事な金色だな」


ミシュアル王子が舞を見据えて言う。

嫌味なのは明らかだ。だが、舞も負けてはいない。


「ええ、そうです。ラシード王子にそっくりでしょう?」


舞の言葉にミシュアル王子は中々答えない。

チラッとライラを見ると、額に玉のような汗が浮かんでいる。微妙な空気が流れ……舞の背中にも冷たい汗が流れた。

ミシュアル王子はジッと舞を見つめ、やがてため息と同時に目を閉じ――。


「うむ。ラシードの幼い頃に似ておるな」


そう、答えてくれたのだった。


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