琥珀色の誘惑 ―王国編―
「ねぇ、アル。怒った?」


日付も変わり、ミシュアル王子は舞の寝室を訪れている。


国王には後宮内に専用の寝室があった。

そこから夜伽となる妃か側室の寝室に通う。一晩中いることもあれば、コトが済めば自分の部屋に戻るなど、国王によって違うらしい。


「勝手な真似をしおって。ルナにとってどちらが良いのか、判らんのだぞ」


舞は、やっぱりと思った。ミシュアル王子も小さな王女が憎くて言った訳ではないのだ。


「もし、ね。わたしの産んだ子供が、見た目が完璧に日本人だったらどうなるのかな、って。アルはどう見てもクアルン人だけど、黒い目で黒い髪で黄色い肌をしてたら……その時になって、見た目で差別しないようにって言うのは卑怯な気がして。それに、アルと同じ色の髪に染めさせたくはないから」


想像するだけで舞は悲しくなる。

自分の産んだ子供が女の子ばかりで、髪を染めなければ外出もさせないと言われたら、舞なら撥ねつけるだろう。

寝台に座る舞の横にミシュアル王子は無言で腰掛けた。そして、彼女の髪をそっと撫でる。


「私の妻になったこと、後悔してはおらぬか?」

「してないよ。だって、アルが好きだもの」


ふいに、優しい空気が室内を満たして……二人の唇が重なっていた。


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