琥珀色の誘惑 ―王国編―
一方、披露宴会場に取り残された男性陣である。
隣室からは微かに音楽が聞こえ、それに女性たちの笑い声も重なった。しかしこちらはひと通り挨拶も済み、シーンとした会場内だ。
やがて、あちこちで会話が始まるが、それも隣の部屋に比べればヒソヒソ話のようだった。
ミシュアル王子は王座から一段下の会場を見渡した。
孤立するかと心配した舞の父は、サディーク王子と静かに語り合っている。人望があり、特に年寄りと子供に人気が高いサディーク王子らしい。
ミシュアル王子はそんなことを考えつつ、父親の横で居心地が悪そうに座る舞の弟、遼の姿に目を留めた。
側近に命じて遼をミシュアル王子の前まで召し上げる。
(国王というのはこういう時に不便だな。気楽に立ち上がり、話しかけることも儘ならない)
「遼だったな。歳は十五と聞いている。何か困っていることはないか」
舞の弟ということは、ミシュアル王子にとっては弟が一人増えるのも同然だ。
かつては、娘が王族のハーレムに入り寵愛を受けるだけで、一族は安泰に暮らせたという。
隣室からは微かに音楽が聞こえ、それに女性たちの笑い声も重なった。しかしこちらはひと通り挨拶も済み、シーンとした会場内だ。
やがて、あちこちで会話が始まるが、それも隣の部屋に比べればヒソヒソ話のようだった。
ミシュアル王子は王座から一段下の会場を見渡した。
孤立するかと心配した舞の父は、サディーク王子と静かに語り合っている。人望があり、特に年寄りと子供に人気が高いサディーク王子らしい。
ミシュアル王子はそんなことを考えつつ、父親の横で居心地が悪そうに座る舞の弟、遼の姿に目を留めた。
側近に命じて遼をミシュアル王子の前まで召し上げる。
(国王というのはこういう時に不便だな。気楽に立ち上がり、話しかけることも儘ならない)
「遼だったな。歳は十五と聞いている。何か困っていることはないか」
舞の弟ということは、ミシュアル王子にとっては弟が一人増えるのも同然だ。
かつては、娘が王族のハーレムに入り寵愛を受けるだけで、一族は安泰に暮らせたという。