琥珀色の誘惑 ―王国編―
その目は絶対に良からぬことを考えている。判ってはいても、逆らえないし、特に逆らう理由もなく――。


『……陛下の、仰せのままに……』


ミシュアル王子は満足気に微笑むと、シュルッとネクタイを解いた。そして、さらなるアラビア語のレッスンに力を注いだのである。



クアルン王国の王太子専用機は国王専用機と名称が替わった。

だが、内装は変わりない。舞は一ヶ月前と同じプライベートジェットに乗り、日本に里帰りする途中なのだ。

日本を出た時は未使用だったキングサイズのベッドが、今回はフライト時間の半分以上で活躍しつつ……。


(そんなアラビア語、ベッド以外のどこで使うのよっ!)


と言うような恥ずかしい言葉を舞が実践で覚えた頃、専用機は成田に着陸したのだった。


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