琥珀色の誘惑 ―王国編―
さすがに牧師の前で愛を誓ったり、神主を呼んで三々九度とかは出来ない。

白い薔薇で綺麗に飾られた祭壇には、二人で読み上げることになっている宣誓書が置かれていた。

そこまではバージンロードに見立てた絨毯が敷かれている。それが赤や白ではなくペルシャ絨毯なのが、ここがクアルン大使館であることを思い出させてくれた。


「アルってばカッコいい……」


何度この言葉を聞いただろう。いや、何度でも言って欲しいのが本音だ。

今日のミシュアル王子はオフホワイトのフロックコートを着用していた。ベスト、タイ、ポケットチーフはシルバーだ。軍服を着るつもりだったが、


「軍服は着ることがあるかも知れないけど、フロックコートって二度とないんじゃない?」


舞からそんな風に言われては『ラー(ノー)』とは答えられない。

何と言っても彼女は、クアルン国内で行う様々な儀式に全て従ってくれた。多少の文句や我がままくらい、可愛いものだろう。


「お父さんと腕を組んで、バージンロードを歩くんだろうなぁって思ってたの」


いつも元気な彼女のしんみりとした声は、ミシュアル王子の胸に響いた。


舞の為とはいえ、ミシュアル王子の独断でサディーク王子の養女にしてしまったのだ。実の父親である月瀬暁は結婚式に立ち会うことすら出来なかった。


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