琥珀色の誘惑 ―王国編―
シャムスの悲鳴に駆けつけて来たライラは、鬼の首を取ったように大騒ぎだった。
「何ということかしら。高潔にて高邁なるハーリファ家の王太子を寝所に引っ張り込むなんて!」
忍んで来たのはミシュアル王子の方なんですが……という言い訳は、一切聞いては貰えないらしい。「正式な結婚を待たずに花嫁が純潔を失うなんて!」と、舞にもわかるように日本語で喚いていた。
「ちょっと待ってよ! そもそもの原因は……」
(……あんたが夜這いして来たせいじゃない!)
そう叫びかけた舞を、ミシュアル王子が慌てて引き止める。
「この者は既に私の妃となることが決まっている。不本意な噂は、二週間後には消えるだろう。同時に、我らの名誉も回復される。――ライラ、約束どおりお前はここから立ち去り、二度と私の後宮に足を踏み入れてはならぬ。よいな!」
ミシュアル王子が舞を止めたことには理由があった。
迂闊に王女の娘であるライラの名誉を汚したりすると、父親が出てきて大騒動になるそうだ。
しかも、ミシュアル王子の後宮で起こった事……それだけの理由で、彼が責任を取って妻にする羽目になるかもしれないという。
問題は、傷ついた舞の名誉だが……。
「何ということかしら。高潔にて高邁なるハーリファ家の王太子を寝所に引っ張り込むなんて!」
忍んで来たのはミシュアル王子の方なんですが……という言い訳は、一切聞いては貰えないらしい。「正式な結婚を待たずに花嫁が純潔を失うなんて!」と、舞にもわかるように日本語で喚いていた。
「ちょっと待ってよ! そもそもの原因は……」
(……あんたが夜這いして来たせいじゃない!)
そう叫びかけた舞を、ミシュアル王子が慌てて引き止める。
「この者は既に私の妃となることが決まっている。不本意な噂は、二週間後には消えるだろう。同時に、我らの名誉も回復される。――ライラ、約束どおりお前はここから立ち去り、二度と私の後宮に足を踏み入れてはならぬ。よいな!」
ミシュアル王子が舞を止めたことには理由があった。
迂闊に王女の娘であるライラの名誉を汚したりすると、父親が出てきて大騒動になるそうだ。
しかも、ミシュアル王子の後宮で起こった事……それだけの理由で、彼が責任を取って妻にする羽目になるかもしれないという。
問題は、傷ついた舞の名誉だが……。