琥珀色の誘惑 ―王国編―
「こういう問題は、一族の恥とか言われるらしいけど……わたしの場合、家族はこの国にいないもんね。それに結婚したら一応チャラなんでしょう?」


舞にとって、国王陛下やヌール妃は舅や姑。出来るだけ第一印象は良くしたい。でも、それと引き換えにミシュアル王子がライラを娶る必要が出て来るなら、イメージなんて二の次だ。

それにシャムスの嘆きようを見ていると、これ以上舞がこだわることで彼女を傷つけたくはなかった。


「シャムス、お妃様はお許し下さったのだ。いつまでもグズグズ言うのは止めて、ちゃんと買い物の手伝いをするように」

「……はい。承知致しました」


(か、かたい。婚約者同士なのに……何で敬語?)


ターヒルの口調は日本で舞に説教した時とあまり変わりない。


「ねえ、ふたりは婚約してるんだからデートくらいはするんでしょ? だって、婚約したらふたりきりで会えたり顔が見られたりするって言わなかったっけ?」


舞の質問にシャムスの顔は真っ赤になった。

もちろん、外出用の三点セット、アバヤ・ヒジャブ・ニカブで舞とシャムスは目の回りしか見えていないけど。


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