琥珀色の誘惑 ―王国編―
「ふーん。じゃ、ターヒルは堅物だけど、ヤイーシュは違うのね。そう言えば……味見がどうとか、わたしに言ってなかったっけ?」

「舞様っ!」


血相を変えてヤイーシュが叫んだ瞬間――「ヤイーシュ!」ターヒルが短く声を上げた。


「失礼致しました……お妃様」


思えば、入国してから一度も名前で呼ばれていない。

ミシュアル王子は「舞」と呼ぶが、それでも、ライラの前では一度も呼ばなかった。なんだか、この名前にも何か問題がありそうで怖い。
 

「ね、普通に名前で呼んでくれていいわよ。なんか……『お妃様』って結婚前なのにこそばゆい感じがするし」


他の三人は一瞬視線を合わせ、そして、代表するようにターヒルが言った。


「戒律により決められたことでございます。詳しいことは殿下よりお話があると思われます」


すんなり納得は出来ない。

でも、問い詰めるならターヒルではなくミシュアル王子だろう。舞が、今夜絶対聞いてやる、と心に決めた時、リムジンは女性専用デパートの前に横付けされたのだった。


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