琥珀色の誘惑 ―王国編―
でも、ごくごく一般人の舞にも、国王が六割方外国人ってどうよ、と思ってしまう。

ミシュアル王子が国内で厳格にムスリムの教えを守ろうと努力するのも、実は自分の中に“流れる血の配分”を気にしているせいではないだろうか?

それは考えただけで、舞は言葉にしなかった。



「舞!」

『わかりました』


舞は覚えたばかりのアラビア語で答える。と言っても、まだ五つくらいの単語しか覚えてはいないが。


如何なるミシュアル王子でも、王宮で声を荒げる訳にはいかないのだろう。舞から視線を逸らし、憤懣やるかたない表情で正面を凝視する。


現在のところ、ヤイーシュの件はお互い譲り合うことなく、まだ喧嘩続行中だった。

昨日も、舞がヤイーシュを見舞いたいと頼んだら、


「怪我人ではない。それに、護衛を見舞う必要などない!」


と、けんもほろろに断わられた。

しかし、これには舞も頭にきて対抗手段を取ることにした。

あれからずっと、ミシュアル王子の言葉には、短い単語以外一切答えていない。ミシュアル王子の苛々は目に見えて酷くなったが……。

そんな時、王宮から『謁見許可』が下りた。


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