琥珀色の誘惑 ―王国編―
王宮内の大広間、そこは体育館さながらの広さで、天井は高くドーム形をしていた。

戴冠式が行われるのもこの場所で、その時は、王族と招待客でドーム内は埋め尽くされるという。

教会のバージンロードのようなセンターロードが設けられ、そこを王太子が歩き、国王の下まで行く。特に王冠のやり取りとかはなく、王太子が国王と入れ替わり、国民のためにアッラーの神に祈りを捧げるのだという。

それで王位は交代したことになるのだ。


そんなことを図解でシャムスに教えてもらった。

ちなみに、戴冠式に舞の出番はなく、結婚式もここでは行わないとか。



正面に置かれた玉座には、すでに国王陛下が座られていた。

七十三歳というカイサル国王は、昔はハンサムだったんだろうな、と思わせるキリッとした風貌をしていた。病気のためか、多少頬が痩けてはいるが、やつれた印象はない。

赤白チェックのグトラと白いトーブを身に着け、口元には穏やかな微笑を浮かべている。舞を見る眼差しに剣呑さはない。ミシュアル王子から威圧感を抜き、ふた回りほど小さくして、半世紀経ったらこんな感じかな? と舞は想像していた。


ミシュアル王子は祈りを捧げる時のように床に平伏し、国王に頭を下げる。

前夜に教えられた通り、舞もミシュアル王子に斜め後方で同じ仕草を繰り返した。


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