琥珀色の誘惑 ―王国編―
言われるまでもなく、ミシュアル王子も末弟を甘やかし過ぎたと思っている。
ラシード王子は多感な時期に、王家の後継者問題で命の危機に直面した。心ならずも、その時はマッダーフの一族に母や弟たちを委ねなければならず……。
長男として自らの手で守れなかったことをミシュアル王子は恥じていた。
だが、どちらにしてもまだまだ子供だ。彼にとって末弟は一人前の男の範疇ではない。
ミシュアル王子は大きく息を吐くと、睨み合うターヒルとヤイーシュに視線を向けた。
『よくわかった。だが、ラシードが私の結婚や即位を妨害することはない。ヤイーシュ、当面は馬鹿な真似をせぬよう、見張りを強化してくれ。それと舞……いや、アーイシャの件だが』
ターヒルが正面を向き、『シャムスの報告では――酷くご立腹とのこと』軽く頭を下げつつ言う。
ミシュアル王子は不意に立ち上がり、ペルシャ絨毯の上を苛々と歩き回った。
王宮用の裾の長いトーブが彼の足先に纏わりつき、悪態を吐きながら蹴るように払う。
『殿下……今更ではございますが、やはり事前に申し上げていたほうがよろしかったのではないかと』
ターヒルの進言はもっともだ。ミシュアル王子自身もそう考えていた。
ところが、予定外の出来事が重なり……。
ラシード王子は多感な時期に、王家の後継者問題で命の危機に直面した。心ならずも、その時はマッダーフの一族に母や弟たちを委ねなければならず……。
長男として自らの手で守れなかったことをミシュアル王子は恥じていた。
だが、どちらにしてもまだまだ子供だ。彼にとって末弟は一人前の男の範疇ではない。
ミシュアル王子は大きく息を吐くと、睨み合うターヒルとヤイーシュに視線を向けた。
『よくわかった。だが、ラシードが私の結婚や即位を妨害することはない。ヤイーシュ、当面は馬鹿な真似をせぬよう、見張りを強化してくれ。それと舞……いや、アーイシャの件だが』
ターヒルが正面を向き、『シャムスの報告では――酷くご立腹とのこと』軽く頭を下げつつ言う。
ミシュアル王子は不意に立ち上がり、ペルシャ絨毯の上を苛々と歩き回った。
王宮用の裾の長いトーブが彼の足先に纏わりつき、悪態を吐きながら蹴るように払う。
『殿下……今更ではございますが、やはり事前に申し上げていたほうがよろしかったのではないかと』
ターヒルの進言はもっともだ。ミシュアル王子自身もそう考えていた。
ところが、予定外の出来事が重なり……。